「俺は父からナポレオン陛下のことを聞いて育ちました。瞬時に戦況を判断し、いついかなるときでも冷静で正確な命令を下し、その偉大さはまるで戦場の神のようだと。だから、グラーツへナポレオン陛下のご子息であるライヒシュタット公がお見えになると聞いて、是非お目にかかりたいと司令官に頼み込んだのです」
「僕も父上のことを詳しく話してくれる人に初めて会えて嬉しかったんだ。それにプロケシュは戦史研究家もしていて、彼のワールテロ―の戦いの分析はすごく面白いんだよ。何時間聞いていても飽きないくらいだ」
どうやらナポレオンに憧れを持っているライヒシュタット公とプロケシュ少尉は、意気投合どころか相思相愛のようだ。歳も近そうだし、気が合うのだろう。……というか、ライヒシュタット公にとって初めてできた同年代の友達なのではないだろうか。
彼は私のことも友達と言ってくれてはいるけれど、やっぱり同年代の男子と本当は十五歳も年上の異性では違う。彼らはまだ会ってさほど日数が経っていないというのに、ふたりはすでに親友みたいだ。
「ふたりが仲良くするのはよいのだけど、フランソワったら最近はプロケシュ少尉とお喋りばかりで私のことを構ってくれないのよ。妬けちゃうわ」
クグロフを取り分けながらそう言うゾフィー大公妃は口ではプリプリ怒っているけれど、その表情はとても楽しそうだ。
「そんなこと言って、僕とプロケシュが会う場を積極的に作ってくれているのはゾフィーじゃないか」
ライヒシュタット公がクグロフのお皿を受け取りながら言えば、ゾフィー大公妃は「だってフランソワの喜ぶ顔が見たいんですもの」と、わざと唇を尖らせながら答える。
そんな可愛らしい彼女にライヒシュタット公は照れたように頬を染めると、「これだからゾフィーのこと大好きさ」とはにかんで見せた。
明るい日差しの中、若い男女の笑い声が響くテーブルはまるで青春の一場面みたいで、私までほっこりとしてしまう。……年齢的に場違い感がないとは言えないけれど。



