――神様、ああ神様。

私、何かいけないことをしたでしょうか?

私、織田つぐみは生まれてから二十六年間、それはそれは真面目に熱心に生きてきたつもりです。

そりゃここ数年は仕事にかまけすぎて恋人をないがしろにし、『俺と仕事どっちが大事なんだよ?』などとくだらないことを彼に言わせたあげく、うっかり『仕事』と答えてしまったりしたけれど。それが原因で別れたりもしたけれど。

でも反省するのはそれぐらいで、あとはそれはそれは真面目に生きてきたつもりです。

それなのに、こんな結末――あまりにも酷くありませんか?


遠ざかっていく意識の中で、私は一生懸命に神様に訴えた。

けれど奇跡は起こらず、冷たくて暗い水の底へと私の身体は沈んでいく。

ヤケ酒飲んで酔っ払って足を縺れさせたあげく橋から転落してオダブツだなんて、本当にみっともない。

(私の人生なんだったの)

虚しく問いかければ、最後に頭に浮かんだのは憎んでも憎みきれない社長の顔。

ああ、悔しいったらありゃしない。

最後に残ったひと欠けらの意識の中で、私は懸命に祈る。

(神様。次に生まれ変わったときにはどうか――どうか、有能なボスの下で思う存分働けますように!)