「は、はい! すぐにお持ちしますね!」
お皿を受け取りトレーに載せて部屋を出ようとする。すると再び、「ツグミ」と呼びかけられた。
「きみを秘書にしてよかったと思うよ」
ただ一言掛けられたその言葉が、私の心臓を激しく高鳴らせる。鼓動が早まって、口角が上がってしまうのを抑えられない。
軽く一礼してから部屋を出て、足早に廊下を歩きだす。
(嬉しい……。どうしよう、すごく嬉しい)
有能なボスに尽くしたいと願って第二の人生を始めた私にとって、クレメンス様に褒められることは最上の喜びだ。ましてやあんな――秘書としての私を丸ごと認めてくれるような言葉、本懐を果たしたといってもいいくらい嬉しい。
心臓はまだドキドキと高鳴っている。
私は足を止めると気持ちを落ち着かせるように深呼吸をしてから、片手で胸を押さえた。
……自分でも気づき始めている。この胸がこんなに煩いのは、秘書としての感情だけじゃないってことに。
そしてもうひとつ。
クレメンス様への情が募れば募るほど私の胸を茨のような緊張感が締めつけて、それはもう知らんぷりできないところまで来ている。



