フランスはナポレオン二世を求める声が最も大きい国だ。現在の君主であるブルボン王朝とその周囲は、ナポレオン二世が担ぎ出され再び革命が起こることを大いに恐れている。
日に日に高まっていくボナパルティズム運動家の声にブルボン派は脅威を覚え、ならばいっそその脅威ごと消してしまおうと過激な手段に出たのだろう。
クレメンス様は眉間に皺を寄せて面倒そうに息を吐くと、「フランス外相に手紙を書く。届けてくれ」と言って、執務机に着き手紙を書き始めた。
「相当ストレスが溜まってるぜ、メッテルニヒのやつ」
クレメンス様が本宮殿へ出かけたあと、宰相官邸に残っていた私とゲンツさんは広間でコーヒーを飲みながら話をした。
「ギリシャはともかくとして、ポーランドとベルギーまで独立しちゃいましたもんね。それでライヒシュタット公に纏わる騒動があっちでもこっちでも起きるんだから、クレメンス様も大変ですよね……」
最近のクレメンス様は本当に忙しい。ロシアやプロイセン、イギリス、フランスの外相や外交団との会議や話し合いは連日だし、書かなくてはいけない書類に信書も机に山積みだ。
話し合いのためとはいえ各国の行政官らがくれば、夜は舞踏会や夜会を開いて招かない訳にはいかない。
もちろん私とゲンツさんもお供するので毎日目の回るような忙しさだけれど、クレメンス様に至ってはいつ寝ているのか心配になるほどの多忙ぶりだ。



