「やることがだんだん過激になってきやがったなあ。頭が痛いぜ」
クレメンス様の執務室へビラを持って駆け込んできたゲンツさんはそう言って、うんざりとした様子でソファーにどっかりと腰かける。
「ツグミ。セルドニキのところへ行って、今夜から警備の数を二倍……いや、三倍に増やすように言ってくれ。ポーランドに対抗したフランスが、ライヒシュタット公の誘拐を企てる可能性がある」
「わ……分かりました!」
クレメンス様に命じられ、私はすぐさま執務室を出て廊下を駆けだした。
けれど、残念ながら事態はクレメンス様の心配したように更に面倒なことになっていく。
ポーランドのビラ事件に続いて起きた騒動は、フランスの警視総監より大使を通じて密告された。
「ブルボン派がライヒシュタット公の暗殺を企てているそうです」
人目を忍んで宰相官邸にやって来たパリ在住のアポニイ大使は、フランスの警視総監より託された書状をクレメンス様に渡して小声でそう告げた。
ポーランドの騒動に比べてあまりに物騒なその密告に、同席していた私とゲンツさんの表情が強張る。



