元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!

 
一方、亡くなった子供の父親であるフランツ・カール大公は、悲しんでいるというよりガッカリしているようだった。

ようやく跡継ぎを作る義務から解放されたのに再び振出しへ戻ってしまい、落胆しているらしい。

子の父とは思えないほどの薄情っぷりだけれど、これもまた時代や王族という立場の違いなのだろう。

そうしてホーフブルク宮殿は以前と同じ平穏さを取り戻しながら新年を迎え、やがて私がこの世界へ来てから四度目の夏がやって来た。



「私は泣きたい ただひとりの友よ お前の胸の上に熱い涙を落としたい されど私にはただひとりの友もいない ただひとりも この大きな広い地上に」

ある日、所用でシェーンブルン宮殿にやって来た私は、廊下の窓から夕日を眺め詩を口ずさんでいるライヒシュタット公の姿を見つけた。

「寂しいけれど綺麗な詩ですね」

彼は私がいたことに気づいていなかったのだろう、声をかけるとびっくりして肩を跳ねさせてから振り向いた。

「なんだ、ツグミか。驚いた」

綻ぶ笑顔は相変わらず美しいけれど、最近はめっきり大人びてきたように見える。

成長期真っ盛りなのだろう、会うたびに彼の身長は大きくなっていて、百八十センチに届く日も遠くないように思えた。