ゾフィー大公妃の寝室の前には侍女や女官、侍医達が集まって立っていた。
ひとりにして欲しいとの彼女の命令で、皆外に出されたのだとエステルハージ侍女頭が私に教えてくれた。
今は会わない方がいいだろうかと躊躇したけれど、ノックをして「大公妃殿下、ツグミです」と外から声をかけてみる。
すると弱々しい涙声で「ツグミだけ入って」と返事が返ってきた。
ただでさえ雨降りの朝で薄暗いのに、カーテンを閉め切った寝室は夜かと見まごうほどの暗さだった。
そんな闇に包まれた部屋で、ゾフィー大公妃はベッドで小動物のように身を縮め、背を震わせて泣いている。
「ゾフィー大公妃殿下……」
……なんて声をかけていいか分からない。子を亡くした母の苦しみがどれほど深いか、私は少しでもそれを救ってあげられるのだろうか。
しばらくただ黙って泣き続けていたゾフィー大公妃は、やがて消え入りそうな声で呟き始めた。



