正直なところ、私は少し不安だった。

パルマ公が屈辱的な初夜を経験したことで深く心に傷を負ってしまったように、ゾフィー大公妃も愛していない夫に抱かれて心を病んでしまうのではないかと。

ところが。

「聞いて、ツグミ! 私、赤ちゃんができたの! すごいでしょう!? 私、お母様になるのよ!」

お祝いの言葉を述べに大公妃の部屋へ伺った私は、「おめでとうございます」と述べる前に笑顔満面の彼女に詰め寄られた。

「ぞ、存じ上げております。おめでとうございます、大公妃殿下。これからはお身体を大切になさってください」

私がお祝いに持ってきた花束を受け取って、ゾフィー大公妃はクルクルと部屋の中を舞う。

「うふふ。私ね、子供が男の子だったらフランソワのような子に育てるの。優しくて、純粋で、勇気があって、頭が良くて、優雅で上品で……ね、素敵でしょう? それから子供と私とフランソワと三人でピクニックに行くわ。どこがいいかしら、やっぱりラクセンブルクかしら」

彼女の言葉を聞いて、はて、父親はいったい誰だったかなと一瞬混乱に陥った。

「あの、えっと、その……フランツ・カール大公はなんとおっしゃっていましたか?」

おずおずと尋ねてみれば、ゾフィー大公妃は花束に顔をうずめ匂いを楽しみながらケロリとした口調で答えた。