……パルマ公がフランスでどんな日々を過ごしたのか、私は想像することしかできない。けれど、彼女はきっともう男性を愛することができないのだろう。

そしてそんなパルマ公を、ナイペルク夫人は受けとめ愛している。オーストリア王室が厳格なカトリックで同性愛を禁じていることを知っていても、なお。

私はもう何も言うことができなかった。

ライヒシュタット公の力になってあげたかった。あの子に母親を会わせてあげたかった。けれど、満身創痍の心でようやく見つけた本当の愛に縋って生きているパルマ公を、これ以上苦しめることなどできない。

「もうすぐ公館前に着きます。どうぞこのままお戻りくださいませ。そうすれば私達も、あなたの秘密に気づかなかったことにしてさしあげます」

「えっ?」

馬車が公館前の大通りに差し掛かる角を曲がったとき、ナイペルク夫人が驚く言葉を発した。

「男の格好をしてらっしゃいますが、女性なのでしょう? でなければマリー・ルイーゼ様が密室の馬車に招き入れるはずがありませんから。……あなたならマリー・ルイーゼ様の痛みをご理解くださると思いお話したのです。どうか私の期待を裏切らないでください」

初めて女性であることを見破られ、私は心臓を大きく高鳴らせて動揺した。

最近では男性らしい振る舞いにもすっかり慣れてきたので、まさかの指摘に冷や汗が噴き出す。