確かに、オーストリアの宮廷は他国に比べて何事も厳格だ。伝統を重んじ儀礼に厳しい。特に異国から来た花嫁は由緒正しいハプスブルク家の一員として恥ずかしくないように、侍女や女官達から相当うるさく口出しされる。
それにくらべ彼女の出身であるバイエルン王室は、芸術的感性が高く明るく伸び伸びとしているらしい。
いくら政略結婚が王族の義務とはいえ、まだ幼さが残る若い王女が生まれ育った国と真逆の厳しい環境で暮らすことにどれほど苦痛を感じているか、想像に難くない。
ましてや本来支えてくれるはずの夫はあの通り頼りなく、年下で宮廷に慣れない彼女を労われる心の余裕もないのだ。
不安で孤独でひとりで泣いていたゾフィーが同じく孤独を抱えていたライヒシュタット公に惹かれ共に過ごしたがるのも、無理はないような気がした。
「……で、でも……」
心情的にはとても理解できる。けれど、寂しさのままにふたりが一緒にいれば、いつか困ったことになるのは当人達だ。
このウィーンで本当に居場所を作るためにも、ふたりには――ライヒシュタット公には道を踏み外してもらいたくはない。
そう思って口を開き直したときだった。



