「そうだね、ツグミの言う通りだ。でもね、僕とゾフィーはみんなが噂するような下世話な関係じゃないよ。僕たちは同じ孤独を持った魂の片割れなんだ」
「魂の……片割れ……?」
「そう。だから一緒にいると落ち着くし……このウィーンで僕らの居場所はお互いの隣だけだ」
そう語った彼の瞳の色があまりに悲しすぎて、私は何かを言おうとしていた口を噤んでしまう。
ライヒシュタット公の語る『孤独』は、思春期の子が語りたがるような美辞麗句じゃない。父親とは三歳で生き別れ、母は五歳のときにイタリアに行ったきりウィーンにほとんど帰ってきていない。王宮では腫れ者扱いされて独りぼっちで、それなのにオーストリアから出ることを許されず、この古くて巨大な鳥かごにずっとずっと閉じ込められたまま――。
運命に翻弄された彼が口にする『孤独』の重みは、私の想像をはるかに絶する。
その孤独を埋める存在がゾフィーなのだと言われたら、私はもう下世話な心配で彼を諫めることなどできなくなってしまった。
「ゾフィーはね、僕とふたりきりになるといつも泣くんだ。ウィーンなんて大嫌いだって、バイエルンに帰りたいって。知ってる? フランツ・カール大公……僕の叔父様は、彼女を抱かないんだって。ベッドに入ると背を向けて寝て、彼女の顔を一度たりとも見ないそうだよ。そうして朝になって、身支度を整えに来た侍女頭のエステルハージ夫人に『跡継ぎも作らずなんのためにウィーンに来たのやら』って毎朝溜息をつかれるんだってさ」



