しかもゾフィー大公妃とフランツ・カール大公の夫婦仲が非常に悪いという噂までまことしやかに流れている。……いや、噂というよりは事実だろう。舞踏会のときのゾフィー大公妃の態度はあからさまだったし、大公夫婦がそろって出かけるのは宮廷の公式行事だけという有様なのだから。
もはやウィーン貴族のほとんどが確信している。少年公爵と若き大公妃は道ならぬ恋仲にあると。
……はっきり言って私は心配だ。
見た目は大人並みでもライヒシュタット公はまだ十三歳だ。二十一世紀の日本でいえば中学二年生、そんな子供が現状の危うさを理解しているのだろうか。いつか大変なことになって彼の立場を悪くすることにならないか、おせっかいながらハラハラする。
「あの……こんなこと言うのはおこがましいとは思うのですが……。ゾフィー大公妃はフランツ・カール大公の奥様です。伴侶のいる方と常に行動を共にされるのは、よい評判を招きませんよ」
我ながらおせっかいおばちゃんだなあと思いつつも、口を出さずにはいられない。だって私は彼のことが本当に愛おしいのだ。この純真な少年が万が一にでも過ちを犯す姿も、そのせいで王宮での肩身が狭くなる姿も見たくはない。
するとライヒシュタット公は、嫌な顔をするでも笑ってごまかすでもなく、少しだけ瞳を悲しそうに曇らせて微笑んだ。



