「それにしても、すごい人気ですね。今やどこの舞踏会や夜会に行っても、あなたの噂ばっかりですよ。ライヒシュタット公と踊ってもらうため、舞踏会場ではご婦人方が列をなして並んでいるとか」
「あははっ、なんだそれ。女の人の噂話って尾びれ背びれがついて本当に面白いよね。確かにダンスの申し込みはいっぱいくるけど、行列してるのは見たことないなあ」
やっぱり無邪気に笑う彼は可愛い。身長はとっくに抜かされて体格も声もだいぶ男らしくなってきたけれど、私の目にはまだまだ幼い子供に見える。
……だからこそ、と言うべきだろうか。私は最近の彼の行動について少し心配に思うことがあった。
「ところで……今日もその……ゾフィー大公妃とご一緒ですか?」
「うん、誘われて一緒に来たんだ。彼女なら馬車の中にハンカチを落としたらしいって、取りにいってる」
やっぱりそうかと思い、私は溜息を吐きそうになったのを危うくこらえた。
あちこちで耳にするライヒシュタット公の噂は、彼を褒めそやすものともうひとつある。ゾフィー大公妃とのよくない噂だ。
あの舞踏会以降、ライヒシュタット公とゾフィー大公妃はことあるごとにふたりで出かけるようになった。舞踏会、夜会、オペラ劇場にピクニックまで。いつどこでもライヒシュタット公の隣にはゾフィー大公妃の姿があって、ふたりがホーフブルクから同じ馬車に乗って出かけることは、もはやウィーン中の貴族が知るところだった。



