元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!

 
「あなたがライヒシュタット公爵閣下だなんて……本当に驚きましたよ」

フランツ・カール大公とゾフィー大公妃の結婚式から三ヶ月が経った1825年、一月。

私は所用で訪れたオペラ劇場のロビーで、偶然顔を合わせたライヒシュタット公と久々に話をしていた。

今日の彼は濃紺のテイルコートを着ている。舞踏会のときも思ったけれど、どうやら彼はまた背が伸びたみたいだ。百七十センチはもう超えているだろう。

「僕の方が驚きだよ。まさか二年近くも本当に僕の正体に気づいてなかっただなんてね。『宰相の秘蔵っ子』なんて呼ばれてるみたいだけど、ツグミって案外間が抜けてるよね」

周りに宮廷官がいないせいか、今日の彼はいつもの少年らしい顔に戻っている。髪を整え身なりはキッチリしているけれど、あどけない笑顔を向けてくれるのが嬉しい。

とは言っても、彼は今や時の人だ。今まであまり華やかな場所へ出なかった彼が社交界デビューをし、あちこちの舞踏会や劇場や狩猟会などに顔を出すようになってから、若く美しい少年公爵の評判は瞬く間に広がった。

しかも彼は礼儀正しくダンスも上手く、頭の回転が速くて会話も上手いという。おかげであちこちの舞踏会にひっぱりだこの大人気だし、今も私と話しているライヒシュタット公には遠巻きにしているご婦人方の熱い視線が注がれている。