安心して踊れるからだろうか、少女のようだった面立ちは艶めいた大人の表情になり、優雅にしなやかに舞うゾフィー大公妃の姿はまるで大輪の薔薇が咲いたように華やかだ。
年齢はライヒシュタット公の方がゾフィー大公妃よりみっつ年下だけれど、身長は彼の方が充分大きい。見目好いふたりのダンスは惚れ惚れとするほど素晴らしく、さっきまで下世話な眼差しで見ていた人達まで、ついうっとりと魅入ってしまうほどだった
……正直、私もお似合いだとうっかり思ってしまった。
けれど、お似合いであればあるほど不愉快なのは彼女の夫であるフランツ・カール大公だろう。今日の主役のひとりだというのに、すっかり拗ねた様子で隅の長椅子に腰を下ろしている。
「あーあ。大公殿下、すっかり機嫌損ねちゃいましたね。無理もありませんが」
クレメンス様にそう声をかけたけれど、返事がない。
どうしたのだろうとそっと顔を窺い見ると、彼はホールの中央を見つめたまま腕を組み顎に手を当てて何かを考えているようだった。
けれど、長い睫毛の影を落とした瞳はどこかもっと遠くを見ているようで、なんだか胸が騒ぐ。
「……天使か、悪魔か。答えは出たようだな」
「え?」
誰に宛てるでもなく呟いたクレメンス様の言葉は、私には意味が分からなかった。
けれどなんだか聞き返すのも憚られる雰囲気で、私はソワソワとする胸を抑えながらクレメンス様の隣で若き大公妃と公爵の煌めくように踊る姿を眺め続けた。



