元社長秘書ですがクビにされたので、異世界でバリキャリ宰相めざします!

 
頬を染め瞳を輝かせ、まるで待ちわびていた人に会えたかのように幸福な笑みを浮かべている。

(えええ……、確かにライヒシュタット公は超がつくほどのイケメンだけどさ、今日結婚したばかりの花嫁が夫以外にそんな顔するのはさすがにまずいんじゃないの?)

明らかに面白くなさそうな表情を浮かべる夫の隣で、まるで恋する乙女のような顔を別の男に向け続ける妻。そしてそんな状況にも動じず、にこやかに挨拶する美少年公爵。

その光景に異常さを感じたのは私だけではないようで、客人達はチラチラと彼らを窺いながらヒソヒソ話を始めた。それどころかホールの最奥の玉座に座っている皇帝陛下と皇后陛下まで気まずそうに眉を顰めてしまった。

現在の皇后陛下はバイエルン王女でゾフィー大公妃の十六歳年上の姉だ。フランツ・カール大公の妻にゾフィーを勧めたのも彼女だと聞いている。

そんな立場の皇后陛下からすれば、この状況は気まずいどころではない。できることなら飛んでいって妹を叱り飛ばしたい気持ちでいっぱいだろう。

やがてホールに新たなワルツの演奏が流れ出すと、ゾフィー大公妃とライヒシュタット公は手を取り合ってホールの中央へと行ってしまった。

さっきは随分と謙遜していたけれど、ライヒシュタット公のダンスは完璧で、見惚れてしまうくらい美しいものだった。

当然男性のリードが上手ければ女性も伸び伸びと踊ることができる。夫とのダンスのときとは違い、ゾフィー大公妃はライヒシュタット公に身を委ねながら華麗に舞ってみせた。