「ああ、紹介しましょう。彼はツグミ・オダ=メッテルニヒ。日本というアジアの島国から来ました。日本人とジャーマル人の血を引いていて、私の遠縁にあたります」
クレメンス様に紹介されて一歩前に出た私を、ライヒシュタット公はにこやかに見ていた。美しい瞳に悪戯っ子の色を浮かべて。
(あくまであなたと私は初対面って訳ね……)
まるで遊び友達のように散々接していながら、ここではお互い公の仮面を装うことを、彼は面白がっているみたいだ。
大人に負けないくらい立派に見えても、やっぱり中身はやんちゃな少年のままだと少し安心もする。
「はじめまして、ツグミです。お目にかかれて光栄です」
我ながらわざとらしいなあと思いながらも手を差し出せば、ライヒシュタット公はそれを握り返しながら「よかったら今度、日本の話を聞かせてください」と言って、私にしか見えないように片目を瞑ってみせた。
私との挨拶が済んだタイミングで、ちょうどワルツの演奏が終わった。ライヒシュタット公はクレメンス様に「それでは」と軽く会釈をすると、ホールの中央から戻ってくる今日の主役の元へと歩いていく。
大公夫妻へ挨拶に行ったのだろうと見ていた私は、その光景の異様さに目を疑った。
さっきまであんなに不機嫌だったゾフィー大公妃が、ライヒシュタット公を前にした途端、満面の笑みを浮かべたのだ。



