「将軍閣下。ガキくさい顔をしてますけど、こいつは陛下から正式に官職を賜った行政官ですよ。頭ナデナデはちょっと失礼なんじゃありませんかね?」
突然ゲンツさんが私とラデツキー将軍の間に割り込んできて、私の頭に載せられていた手を乱暴に払った。
ラデツキー将軍は一瞬呆気に取られていたけれど、すぐに冷静さを取り戻す。
「確かにその通りだ。失礼をした、宰相秘書官殿」
折り目正しく頭を下げたラデツキー将軍に、私は焦って両手をつき出しながら首を横に振る。
「ぜ、全然っ! 全然気にしてませんから! 謝らないでください!」
ラデツキー将軍は頭を上げたけれど、非のない彼を謝らせてしまったことに罪悪感が湧く。
「あの、その……全然失礼じゃないっていうか……、むしろちょっと嬉しかったです。大人になると褒められても、頭を撫でてもらえることってなかなかないから……」
子供っぽい本音を照れながら吐露してしまうと、ラデツキー将軍の顔が安心したように綻んだ。
その表情を見てホッとしたのも束の間――。



