「えーと、1822年っと……」
この電子辞書には世界史の情報も入っている。年代やキーワードを入力すれば短いながらも解説が出てくる優れモノだ。
とりあえず今得ている情報から、この時代がどんな時代だったのかを調べようと思った。世界史は苦手な方ではないけれど、得意な方でもない。
十九世紀のヨーロッパが革命や独立に湧いていたことは知っているけれど、1822年前後って何があったっけ?と首を傾げるのが正直なところだ。
「1822年、主な出来事……ヴェローナ会議。オーストリア、ロシア、プロイセン、フランス、イギリスらを中心に行われた国際会議。主にスペイン革命、ギリシアの反乱について話し合われた。議長はウィーン会議に続きメッテルニヒが務めた……んん!?」
さっそく表示された情報を読み上げ、私は思いきり目を見開く。そして頭の中で何かが弾けたように叫んだ。
「ああー! そうだ! メッテルニヒって、『会議は踊る、されど進まず』の人だ!」
ようやく思い出した、クレメンス・フォン・メッテルニヒ。超有名人って訳ではないけれど、ヨーロッパ史には必ず名前が出てくる人物だ。
確かナポレオンが失脚したあと革命に湧くヨーロッパを弾圧して、旧体制……いわゆるウィーン体制を敷いた人物じゃなかったっけ。特にイタリア独立の敵、悪役みたいに教科書には書かれていたような気がする。
そのウィーン体制を決めたのが『会議は踊る、されど進まず』の台詞で有名なウィーン会議だったはず。……あれ? 言ったのは違う人だっけ?
必死に頭を働かせながら、私は辞書でメッテルニヒの項目を調べていく。
細かいことはさておき、ウィーン会議、ウィーン体制の中心人物であることは合っていた。



