肩を竦めて謝る。それにしても、あの辻本があたしの名前を知っていたなんて光栄だ。握手でも求めた方が良いのか。 「何回、模試受けたか覚えてるか?」 「ん?」 「俺が知った一回以外、葛野の名前を見ることが無かったから」 それはそうに決まっている。 「一回しか受けてない」 「え、どうして」 「あれ、学校で受けた……団体受験? みたいなやつで、あたしは予備校行ってないから」 「ってことは、初めて受けた模試ってことか?」 「ああ、そうなるね」 数か月前のことだけれど、結構前のことのように感じる。