「何度言ったら分かるんだよっ!?これ以上俺をイラつかせんなっっっ」
ドガっ!
日に日に酷くなる暴力。
殴られ、壁に押し付けられるママの姿を、扉の隙間から見ることしか出来ないあたし。
「…っ!」
キッと男を睨みつける鋭い目付き。
「なんだその目は?なんでお前はいつもいつも…!」
男が手にしたのは花瓶。
中に入れられていた花と水が、ボトッと音をたて床に落ちた。
ダメ…。
ママが殺されちゃう…。
震える手足。
動くことさえ出来ない。
だけど、あたししかママを助けられない。
あたしが…っ!
「やめてっ!」
勢いに任せ、男の体にしがみつく。
「お前は引っ込んでろ!」
その言葉と共に、男は簡単にあたしを突き飛ばした。
「柚姫!」
食器戸棚にぶつかりそうになるあたしを咄嗟に庇うママ。
ドンッと大きな音を立て、ママの背中が戸棚にぶつかる。
あたしには力がない。
ママを守ることすら出来ない。
それが悔しくて、情けなくて、目に涙を溜めたまま男を睨みつける。
「その目、母親そっくりだな。ガキのくせに俺に楯突こってのか?あ"?」
そう言って男は、あたしの胸元を掴んだ。
「この子には手を出さないで…!あたしが悪いの…っ。本当にごめんなさい…ごめんなさい…っ」
震える声で何度も何度も床に頭をつけ「ごめんなさい」と口にする。
まるで檻に閉じ込められているみたいで、毎日が地獄だった。