「それで、柚姫になんか用ですか?」
あたしの代わりに流牙くんが訊ねる。
「担任から聞いたぞ。出席日数もギリギリ。中間は赤点。期末もこの調子だと間違いなく留年すんぞ」
何を言うかと思えば、そんなことか。
「この学校留年とかあるんだね」
焦るところだろうけど、あいにくあたしは興味無い。
そもそも高校なんて行くつもり無かった。留年したらさっさと退学して仕事探せばいいだけの話だし。
「ゆったん、留年だよ!留年!大変だよ!」
留年という言葉に騒ぎ出す魅斗くん。
「柚姫ちゃんって頭良さそうなのに以外とバカなんだね〜」
あははとお腹を抱えて笑い出す瞬くん。
「ここのテスト、そこまで難しくねぇだろ」
呆れて話す流牙くん。
「化学と物理ってけいちゃん担当じゃん〜?どこ出るのか教えてよ」
赤点は35点以上とれば確実に免れる。
これで2教科は確実に問題ない。
「甘えんな」
手に持っていた教科書を丸めて、ぽんっと頭を叩く。
「教科書で生徒叩くのは良くないと思いまーす」
声のトーンを一気に下げる。
あたし勉強嫌いだし。
男の次に嫌いだし。
「流牙、霜華のお姫様が赤点プリンセスって、僕、問題だと思うんだよね」
「赤点常習犯が言うかソレ。けど、霜華背負ってるって自覚はしといて欲しいよな」
「柚姫ちゃん、一緒にオベンキョーしよっか?」
なんか、周りでゴタゴタ言われてる。
すごくめんどくさい予感がする。
「お前ら、あと頼んだ。柚姫の赤点回避してくれたらメシ連れてったるから」
はぁとため息を吐くと空き教室から去っていくけいちゃん。
そう、全てはこの時に始まった。