「あ、お母さんからだ」


お夕飯もお風呂も終えたリビングで、私は参考書とにらめっこ、晃くんはノートパソコンで会社のバイトをしている。


私がソファで寝落ちして転げ落ちかけるという失態してから、寝る前のこの時間、私たちはソファに背中合わせで座るようになった。


あの日の翌日、なんとなく私が横向きに座っていたら、晃くんが背中合わせに座ってきたのがきっかけ、かな。


晃くんの顔は見えないから、ドキドキして勉強の集中出来ないなんてことはなくて、むしろ背中伝いに感じる晃くんの体温と心音は、私をとても落ち着かせてくれた。


少しはドキドキするけどね? 晃くんにはヒミツだけどね?


「なんて?」


背中越しに晃くんが訊いて来る。


「お母さんと奏子さん、再来週に一度帰ってくるって。またすぐ戻るって書いてあるけど。晃くんの方には来てない?」


「ん、ちょっと待って」


と、晃くんがリビングのローテーブルに置いてある自分のスマホを取った。


「……母さんからだ。気付かなかった」