「本気だから、譲るの。……絶対、さゆには幸せになってほしいから。……だから、俺じゃ駄目だから」


俺では、さゆを幸せにする未来を描けない。


……………あの、悪魔のような父親の血を引いている、俺では……。


「晃、言っとくけど、お前も咲雪も、俺にとっては大事な友達だ。咲雪だけ幸せになっても俺は不満。晃もちゃんと幸せになってくれなくちゃ――」


「幸せだよ」


「………」


「さゆと一緒にいる今、すげー幸せ。もう俺の一生分の幸せ使い切ってるんじゃないかってくらい。……母さんと小雪さんには感謝してる。短い間でも、さゆと一緒に暮らしてなくちゃきっとこんな思いしてない。……俺はもう、十分――痛っ」


いきなり頭をはたかれた。