「……大変だね、お前は」


「うん」


俺のことを――うちにあったことを知っている巽は、そっと目を細めた。


絶対に、傷つけらんない。


だから、触れない。


どす黒い俺の中の、唯一綺麗な場所。


そこに、さゆがいるから。


「でもさー、今の状態だと晃が咲雪の彼氏になってるから、咲雪はお前に縛られちゃうワケだけど?」


「……ちゃんと譲るよ。さゆのことだけ見てくれる奴が現れたら、俺が今いる場所、全部」


さゆを一番大事にするのも、さゆに一番大事にされるのも、さゆだけを愛していいのも。


……俺以外の奴に、ちゃんと譲る。


自意識過剰かもしれないけど、今、さゆに一番近いのは俺だと思っているから。


巽が声をひそめてきた。


「……晃、譲れるの? お前だって本気で咲雪のこと――」