晃くんは慌てて離してくれた。


隣の巽は不思議そうな顔をしている。


「咲雪、晃に抱き付かれんの大丈夫なんだ?」


「ん? うん、だって晃くんだし」


「男嫌いの咲雪にしては珍しいなーとね」


あー、それか。


「別に男嫌いなわけじゃないよ。なんか昔っからヘンな絡まれ方するから苦手なだけ。お母さんに辛い思いさせたのもクソ野郎だし」


忌々しい、あのクズ野郎。


毒を吐いた私にも、巽は慣れた様子だ。


「……あ、そういやさ――


「ゆ、雪村くん!」


巽が何か言いかけたとき、女子の大きな声が響いた。


振り返ると、クラスの女子が集まっていた。廊下からは別のクラスの生徒もこちらをのぞいているのが見えた。


う……。


「咲雪ちゃんと付き合ってるの……?」