「えっ、あ、いや――」


こ、これは男子に言うのは恥ずかし過ぎだし――


言いよどんでいると、男子が琴の方へ歩いて来た。


「大丈夫? かなり顔色悪いけど」


そう言って、琴の額に手をのばしてきた。


ひんやりとした感触に、のぼせたような感じだった体温が落ち着いて行く気がした。


「巽! な、何やって――」


慄いたような声が響いて、男子が振り返った。


あ、あの子……。新入生の中で一番可愛いって評判で、晃に次ぐくらい頭もよくて、いつも親友の女の子と一緒にいる、琴からしたら憧れのカタマリみたいな子だ。


男子が琴の傍にいるのを見て驚いているから、もしかしたら彼女なのかな……?


「だ、大丈夫? 三科さんっ。巽! 寝込んでる女の子に何してんの!」


「いや、三科さんの顔色がかなり悪かったから、熱とかあるのかなーって……。咲雪はどうしたの?」


さ、さゆき⁉ 司さんの名前、呼び捨てにしてる男子、初めて見た……。


司さんって高嶺の花ってイメージで、男子からは『咲雪さん』とか呼ばれているのをよく聞いていたからびっくりした。


やっぱり付き合っているのかな……。