別に、理由はなかった。あえて言うなら、なんとなくつまらなくて。


琴は、不良の道に入った。


それも二年もしないうちにつまらなくなって、じゃあ高校くらいからまたマジメになってみようかなって思った。


一つに夢中になったら他のことが目に入らない琴の性格が功を奏してか、県下でもレベルの高い県立の高校に入学出来た。


中学時代の知り合いもいないところで、よし、今日から真面目で優等生な琴になるんだ! って、意気込んでいたのに……。


小学校時代、少しの間クラスメイトだった晃がいるし……。


晃の家は複雑で、晃はいつの間にか転校していて、誰もその行先とか知らなかった。


それから少しして、晃の父親が傷害で逮捕されていたと知った。


奥さん――つまり、晃のお母さんと晃は、DVの被害者だったんだ。


学校も、マスコミ報道とかから晃と晃のお母さんを護るために、ひっそり引っ越しを勧めていたらしい。


元々、感情を見せない、無表情でいることが多い晃だった。


でも顔面がそのテンションについてくるのが遅いだけで、ノリのいい奴だってことはみんな知っていた。


その晃が、傍から見てもわかるくらい笑っていた。