「そうだね。あの桜並木歩きたいなー」


「だな。あと、さゆ?」


「うん?」


顔をあげると、晃くんの顔が近づいて来た。そして耳元にささやかれる。


「明日は、衣衣(きぬぎぬ)の朝でよろしく?」


バッと、両耳をふさいだ。


「な、なんてことを言うの……」


そ、それって、きぬぎぬって……!


「二年半経つし、さゆの心の準備も出来たかなーと」


「う……」


「でも、出来てなくてもいいよ。さゆが大丈夫になるまでいくらでも待つから。それに、離れる意味の方じゃないし」


「………っ」


「取りあえず、ここで最初のキスしてい?」


口端をあげる晃くんの色っぽさ。私、彼女なのに負け過ぎでしょ……!


思い切って、ぎゅっと抱き付いた。


「さゆ?」


……そう呼んでくれる、その声も、大すきなんだよ。


「私、晃くんを好きになってよかった。晃くんがいてくれるから、ずっと幸せだよ……」


優しく頬に手がかかって、上を向かされる。


そこにあるのは、私が映りこんだ穏やかな瞳。


そっと、唇が触れ合う。


「俺も、さゆを好きになってよかった。……さゆと出逢えて、幸せだ」





END.