それだけ口にして、さゆはしゃくりあげながら泣いた。


言葉は、それだけだった。


どれくらい経ったか、さゆの嗚咽が収まった頃、ゆっくり腕を離した。


近くのティッシュ箱から数枚抜き取って、さゆの顔を拭く。さゆはされるがままだった。


「……旭から、聞いたんだ?」


「……晃くんは知ってたの?」


「少し前に、旭から聞いてた。小雪さんから言わないように言われていたって聞いたから、俺も黙ってた」


「………」


「さゆ、旭のこと好きだったんだな?」


「………」


さゆは答えずにうつむいた。


俺から続きを問うことも出来ず、これ以上訊いたら問いただすって感じになりそうだから、黙っていた。


「……小学校のころ、旭だけがライバルだった」