「さゆ……?」


「晃」


勢いよく俺の前を横切って階段を駆け上がったさゆ。


呆然と階段の方を見上げていると、リビングから旭が出て来た。


「旭……どうしたの? さゆ」


「……言った」


「……は?」


「話した。兄妹、だって……」


「わかった。旭、少し待ってて。時間かかるかもしれないけど」


自分の鞄を旭に投げて、俺も階段をあがった。


旭が小さく、「ごめん、晃」と呟いていた。


二階にあがると、すすり泣く声がさゆの部屋から聞こえて来た。


黙ってさゆの部屋のドアを開けると、ドアのすぐ傍にしゃがみ込んでいたさゆが顔をあげた。


涙まみれで、唇を噛みしめていた。


「こ、うくん~……」


「ん。旭は来ないよ。俺だけ来た」