「あ、さゆ?」


「もー、傘持って行ってって言ったでしょ? 何やってんの」


「雨宿り?」


「晃くん、最近ボーっとしてない? ほら、帰るよ」


……それは少し考えることがあったから。


さゆはずいっと傘を差し出してきた。


「一緒に帰って、いいの?」


「また雷鳴って来たらどうするの。早く帰るよ。あ、荷物持つから傘持って。晃くんのが背ぇ高いから、私が持ってたら晃くんの頭に当たっちゃうから」


「いい両方持つ」


「え、それじゃあ私が来た意味がないって言うか……」


「迎えに来てくれたろ?」


さゆの手から傘を受け取って歩き出すと、さゆも並んで歩く。


狭い傘の中、傘を持っている方の腕がぶつかりそうで焦る。


……旭、いつかは言うみたいだった。ただ、今はそのときではないって感じだったけど。