日曜日、今日は俺が食材の買い出しの日。


勉強の意欲が増したさゆは、今日は勉強漬けだーと騒いでいた。


母さんたちは来週の金曜日に帰って来て、月曜日にまた発つ予定らしい。


それが過ぎたら俺たちは夏休みだ。と言っても、ガチガチの進学校だから補講が目いっぱい詰まっているけど。


相変わらずさゆとの同居は秘密だから、一緒に外を出歩くことはない。


さゆは『付き合ってるっぽいこと』ならする気だったみたいだったから最初の頃は、デートくらいは誘ってもいいかなって思っていた。


でも、どんどんさゆに惹かれている自分に気づいて、誘うのはやめていた。


これ以上距離が近くなったら、本気で手放せなくなる。


俺と一緒になったって、さゆを幸せになんてしてあげられないかもしれないのに……。


さゆのことは、絶対に傷つけないし泣かせないって決めている。


でも、好きな人のことを傷つけない自分になれるって、俺は言い切れない……。


近場のスーパーへの途中にある古書店の店先で、店外に出された書棚を見ている人影に気づいた。


「旭?」