きっと紅葉さんは、信用できる大人が、美桜だけだったんだ。


美桜はきっと、それがわかってて紅葉さんを雇って、働かせた。


酷いと思う。学生の仕事は勉強でいい。ホストとか、レンタル彼氏とか、そんな汚れ仕事みたいなものでなくていいのに。


「じゃあ、なんで居場所を無くしてまで、俺を守ろうとしたんですかっ!?」

泣く寸前のような顔をして、妖斗が叫んだ。


「……お前が、俺にそっくりだったからだよ。似てるんじゃなくて、本当にそっくりだったの。学生なのに美桜に拾われたのも、未来に期待してなかったのも。……俺みたいな穢れた人間にしたくなかった。それに、美桜は決していい親じゃないからな」


紅葉さんは、そこで一度喋るのをやめた。


「……少なくとも親父よりは、よっぽどいい親だったけどな」


そういって、紅葉さんは目じりを下げて、悲しげに笑った。