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その日の夜。
「ねぇ兄さん、もう大丈夫なんだよね?」
ベットで窓の外を眺めていたら、妖斗がそう話しかけてきた。
「ん、何が?」
「……兄さんは、もう居なくなったりしないよね?」
その言葉はまるで、俺の心中を見透かしてるみたいだった。
「何言ってんだよ妖斗、いなくなるわけないだろ」
言えない。言えるわけがなかった。喧嘩するのを止められてるなんて。
喧嘩もできなくて、せいぜい光輝が飯を作るのの手伝いくらいしかできない俺は、ここにいていいのか?
飯の手伝いはよく翼咲がしてるし、翼咲の方が俺の数倍は料理が上手い。
——だったら、俺はここで何をしてればいい?
俺の存在価値ってなんだ。
せっかく助けられたのに、俺は何の恩返しもできないのかよ……。
妖斗だって最近は喧嘩が強くなったり、色々出来るようになってるのに。
何の役にも立たないんじゃ、俺なんていてもいなくても変わらないんじゃないか……。



