「そんじゃ、家行くかー。トア、お前料理は?できんの?」
歩きながら、美桜さんは聞いてきた。
「家だといつも世話してくれてる人が作ってたんで、正直料理は、あんま自信ないです」
ふと、光にぃの姿が頭をよぎった。……心配そうな顔、してたな。まるで今にも泣きだしそうな程。
自殺しようとした俺を止めてくれたのも光にぃだったし、本当に、最期の最後まで心配かけちゃったな……。
「そうか。じゃ、慣れるまで俺の手伝いしてろ。他の仕事全部一切さぼらずやってくれんなら、それでいいよ」
「ありがとうございます」
「おう!」
美桜さんは、そう爽やかに笑いながら頷いた。
……笑った顔、初めて間近で見た。麗羅さんと居た時も美桜さんテンション高くて笑ってたけど、その時はちゃんと見れてなかったから。
「……なんか、意外です」
「んー? 何が」
マンションに続く階段を上がりながら、美桜さんは言った。
「……ホストって、もっと怖い人が沢山いるのかと思ってました」
――ガンッ!!
俺は美桜さんに胸を押され、身体を壁に押し付けられた。
……男が男に壁ドンされるのって、すごい違和感だ。
「……勘違いするな、妖斗。お前が俺に優しくするのは、お前が使える奴だと判断したからだ。紅葉もそうだ。基本あいつは、俺が雇った奴に関して文句は言ってこないんだよ。
1分たりともサボったりなんかするなよ。……使えなくなったら、即切り捨てるからな」
「……そんなこと言われなくても、サボったりなんかしませんよ。俺にはもう、行く宛なんかないんですから」
そう言って、俺は目じりを下げて笑った。



