ネェ、オレヲアイシテ?Ⅲ~Promise or Secrets~



「ほら、あそこだ。紅葉見られるの嫌いだから、騒ぐなよ?」

「……はい」

 美桜さんは門をほんの少しだけ開けて、紅葉さんのいるところを、顎で示して、俺に教えてくれた。

どうやら紅葉さんは、ワイングラスがあるテーブルの近くのソファーに座ってるらしい。

 店内は、中央にあるワイングラスのタワーの他には、その周りにあるテーブルやソファーの端にバラの造花などがあったりと、随分煌びやかに装飾されていた。

「いらっしゃい、お嬢さん。今日も来てくれたんだ、嬉しいな」

「もー、紅葉さん、お嬢さんなんて言わなくていいよー」

 紅葉さんは指名された場所に行くと、そんな絵に書いたようなセリフを言って、女を喜ばせた。


「え、どうして? 君、こんなに可愛いのに」


 女の人の頬に手を当てて、紅葉さんは笑った。

「またまたー、どうせ、誰にでもそういうこと言ってるんでしょう?」


「いや? ――――だよ」

 女の耳元で、紅葉さんは小さな声で囁いた。


「あの、美桜さん、今紅葉さんなんて言ったかわかりますか?」

「ん? ありゃぁたぶん、“君だけだよ”だな」

 俺は思わず、紅葉さんから目を背けた。

「もういいのか?」

「……すごく、キザですね」

 美桜さんに顔を覗きこまれ、俺は小さな声で言った。

「まーな。ホストってのは、真面目でフレンドリーな奴か、チャラい奴かキザな奴か、あとはコミュ力が高い奴が売れるんだよ! 金が欲しいなら、そのどれかになるこったな」

「……分かりました」