「……お前はなんて言葉をかけて欲しいんだ。辛かったなって、苦しかったなって言って欲しいか?」
翔太さんが俺の目の前に回り込んできて来て、笑いながら言う。
不敵な、悪巧みをしているかのような笑みだ。
「……そんな風には思ってません。苦しみが分からないくせに、そんな風に言われたくはないです」
「じゃあ沢山耐えたんだね、凄いね、偉いねって言って欲しいか?」
「そんな風にも言われたくないです」
「じゃあお前はなんて言われたいんだ。『汚い』って罵られたいのか? そうなんだろ? お前は俺達に否定でも称賛でもなく、肯定をしてもらいたいんだろ?」
――図星だ。でも、初対面の人にこんなふうに言われたくない!
怒りでカッとなって、体の芯が熱くなっていく。
「お前は『自分は可哀想な奴だ』と思い込んでるだけだ!傷を言い訳にして、絶対に誰にも選ばれないって決まってる訳でもないのにそう決めつけて、自分で自分の人生を棒に振ってんだよ!そうしないと、後が怖いから。お前は選ばれないのが怖くて仕方がないから無精子症と傷のことを言い訳にして逃げてるだけの"ただの臆病もん"だ!」
「うるせぇ! わかったみたいに言うな!」
俺は包帯が巻かれた両手で、翔太さんの腹を勢いよく押した。
腕が痛いせいか力をあまり込められなくて、翔太さんは俺に体を押されても、一歩も後ろに下がらなかった。
「そうやって叫ぶのは、図星だからか?」
「なっ!?」
……ムカつく。俺の気持ちも分からないくせに、諭してくんじゃねぇよ。
すげぇ不愉快だ。
俺は腹の包帯を巻き直すと、光輝の手から服を奪い取って、着直した。
「……く、紅葉さん」
「……俺、美桜のとこ帰る」
「何言ってるんですか。あの人は毒親ですよ?」
光輝は俺の服の裾を掴んで、引き止めた。
……毒親か。
あいつは確かに、そうなんだろう。でも少なくとも、今日会ったばっかの人にこんな親ヅラをされて説教されるよりは、よっぽどマシだ。



