「あの、歩夢……」
「真っ赤になって狼狽えてんの……?
マジで可愛すぎるんだけど」
「可愛くなんかない!」
「……毒舌で腹黒いのに、ツンデレでウブで照れ屋って何? これがギャップ萌えってやつ?」
狼狽える私を置いて、歩夢が片手で口を覆い、悶えてる。
反応に困るし、そう言ってくれて悪い気はしない……だけど、
「(どうしよう、気色悪いとか言ってもいいのか)」
仮にも私のことを好きだと言ってくる人に傷つけるようなことを言ってもいいのか。
何とも思ってない人ならバシッと言えるけど、歩夢相手だと面と向かって言える言葉ではない。
「あの、そろそろ帰ってもいい?」
「送ってくよ」
「……ありがとう」
私は抱きしめられた感触を忘れずにいて、平常心で歩夢の側にいることができなかった。