「先生に色々しでかしたから、その恨みでいきなり応用ばっかだったらどうしようとか……。
そんなことばっかり考えてたらいくらやっても足りないって思っちゃって」


「そればっかりはわからない」



王子様は苦笑いだったが、目つきは優しかった。



「今そんな風に考えることは努力の証だ。
とはいえ、体調崩すほどの努力は禁物だからな」


「え?」


「というわけで今日は家に帰ってゆっくり寝ろ。
勉強は絶対すんなよ」


「は?」



呆然とする私を置いて「じゃーな」と言えば、嵐のように去っていった王子様。


しばらくその場で立っていた私は我に返ると、机の上にあった小テストを鞄に入れて、家に帰ったのだった。



小テストには赤ペンで"明日からまた頑張れ"という王子様からのメッセージがあって、今日は教える気がなかったのだと気づく。


だけど、自分の体調を気遣ってのことだと考えてたら自然と心が温かくなった。



……歩夢が王子様って言われるのわかる気がする。



そう思いながら帰路を辿ったのだった。