「じゃあ、呼んでみなさいよ。ほーら早く」
「呼べばいいだけの話だろ? ほら、さ、ささささ……」
「ねえ、呼べばいいだけの話なんでしょう?」
ほら、あなたも同じじゃない。
人のことを言えないわ。
というか、私以上にテンパってない?
「……沙也加」
「やっと呼べたみたいね」
上から目線で言ってはみるものの、内心は結構嬉しかったりするものだ。
歩夢が口にした私の名前は自然と聴き心地が良くて、なんかこの声は好きだなと柄にもなく思った。
……決して、好きとかそういうんじゃなくて!
ただ私のことを名前で呼ぶ人は歩夢が初めてだから、その相乗効果ってなだけで!
「テストまでの間、よろしく頼むわ」
「……おう」
その日はもう勉強する時間もないので、これでお終いとなった。