……本当歩夢でいいんだよね?


さすがに聞くまでもないが、対人用の声といい、キラッキラッな笑顔といい、かしこまりすぎた敬語といい、これは歩夢か?


すごいを通り越して引き気味な私は、そーっと自室へ向かおうとした。



「ちょっと沙也加!
歩夢くんを部屋に連れて行きなさいよ!」


「……わかった。じゃあ、着いてきて」


「あ、お願いします」



さすがにバレるか……。


でも、そのおかげで話題が終わったということもあって、歩夢を自分の部屋へと招き入れた。



「へえ、ここが沙也加の部屋か。
なんというか……シンプルだな」


「可愛いもの期待してたら大間違いよ」



裏の性格に入った歩夢に改めてギョッとするが、平静を装って普通に答える。



私の場合は女子特有のぬいぐるみとか、ピンクの小物とかそんなものは部屋にない。


ベッドと机と椅子と本棚と、最低限のものしか置かれていない。



「結構綺麗だな」


「それは良かった」



普段から散らかさないのでそこまで片付けをする必要はなかったけど、念入りに確認してよかった。