そうしてシフト終了時刻まであと少しに差し掛かる時のことだった。



「これ、2番の席ね」


「わかった。ありがとう」



ご注文の品を運ぶため、トレンチを持って移動していると誰かが教室に入った。


新しいお客さんかな。



「……歩夢?」


「おまっ……! ああ、やっぱり来ればよかった!」



ご案内するため入り口の方に向かえば、歩夢が執事姿で立っていた。


私を見るなりすぐに腕で顔を覆っては、指の隙間からチラチラと覗く。


せっかく様になってるのに、これじゃ台無しだ。



「……今のが無ければカッコよかったのに」


「今、お前何つった? え、幻聴じゃない?」


「さあ? 幻聴かもね」



口惜しがる歩夢を見て、私はハッとなって周りを見渡した。


視線がこっちに集まってる。


だが同じ学校の人達は私を見て、口をポカン開いている。