王子様の弱みを握っただけなのに。



「いらっしゃいませ……だにゃー」


「あ、ネコちゃん可愛い! 2名です!」


「ごあんにゃい、いたします……」



衣装までならまだ我慢できるのに。


ネコ語はもう恥ずかしくて穴があったら入りたい。



「いいよ、志村さんグッジョブ!!
客がどんどん増えていくわ!」


「……本当に今すぐ死にたい」



クラスが一丸となって頑張っている中、私だけ空気読めない行動を取るわけにはいかないのだ。


本音を言えば、歩夢の悔しがる顔は見なくてもいいから、今すぐ帰りたい。



「ネコちゃん! ご注文お願いしまーす!」


「たにゃいま伺います!」



そして歩夢にこの姿を見てもらいたくないと思いながら、早く時間が過ぎろと祈り続けた。


なんとまあ、矛盾だらけなことで。
だけど本当にそう思うのだ。


ご注文を受けに客席に向かうと、そこには男性が3人いてニタニタと笑いながら私を迎えた。



……なんか嫌な予感。