王子様の弱みを握っただけなのに。



「志村さん、やっぱ似合ってる!
これで王子様もメロメロ間違いないわ」


「……本当にアレしなきゃダメ?」


「絶対にやるの!
クールな顔つきの子がやれば間違いなくギャップ萌えが狙えるわ!」



いくら実行委員の計らいとはいえ、もし決定権があるのならやりたくないで済むのに。


歩夢を妨害するとはいえ、そこまでしなくても……。



「だって、王子様にシークレットしてきたんだもの。
王子様にバラすタイミングはうちのクラスの女子が頑張ってくれるわ」


「なぜそこまで頑張る?」


「焼肉が待ってるわ」



ため息を吐きながら、私は改めて今着ている服を見つめた。


どこかのメイド服のような格好をしている。


そして鏡に映るのは、ネコ耳のカチューシャをかけてメイクアップされた私。


クラスメイトが頑張ってくれたこの衣装。


ないがしろにするわけにもいかないのは分かってる。


分かってるけど……