「なあ」


歩いてる途中、王子様に話しかけられて私は足を止める。



「お前の名前は何だ……?」


「ああ、それなら教えてあげる」



私は後ろを振り返り、王子様の目を見つめた。



「志村 沙也加。──あなたの隣の隣のクラスよ」


「2年4組って言えや」


「それもそうね。これから、よろしくね」



よろしくなんてするつもりないけどね。


そう思いながら、私は今度こそ王子様から去った。




「……志村 沙也加か。絶対に倒してやる」



去り際に王子様がこう言ったのを耳にしながら「無理でしょ」とほくそ笑んだ。


王子様の声音で悔しそうな表情を想像すると、本当に楽しいったらない。




だけど、私は知らなかった。



彼の裏の性格はまだ序ノ口だということを。