王子様の弱みを握っただけなのに。



「王子様を惑わすのも悪くないでしょう?」



確かに、歩夢はいつも私をドキドキさせる。


歩夢の照れ顔はよく見るけど、困った顔は見ない。


いつもの仕返しと思えばどうってことないし、むしろ困った顔見たいんだけど。


それに……断ったら、クラスの雰囲気悪くなりそうだし、ここは頷く以外の選択肢は用意されないようだ。



「わかった。足止めするだけでいいんだよね?
それ以外は引き受けないから」


「ありがとう〜!!」



私は歩夢の困った顔を見たい。


クラスメイトは歩夢のクラスを妨害したい。


目的は違えど、私たちはクラスメイトとして文化祭を迎えることになった。



「……あれ、いないな」



放課後になって教室前をひょいっと覗くが、歩夢の姿が見えない。


いつもならもう既に待ってるはずだけどな。


ホームルームが長引いてるのかな。