「……ありがとう」



歩夢の言葉に耐性なんかあるわけもなく、照れた表情を顔に出さないことに必死だ。



「じゃ、送る」



ストーカーのことでまだ怖いので、お言葉に甘えることにした。


その間も歩夢の隣に立っているだけでドキドキしてしまう自分がいて。


あっという間に私の家の前に着いた。



「今日はありがとう。じゃあ、また明日」



さっと玄関に入ろうとして、ふと気になって歩夢がいる後ろへ振り返る。


私と目があった歩夢は微笑みかけて「早く入れよ」と催促する。


そこで無意識のうちの行動だと気づいた私は「分かってる!」とバタンとドアを勢いよく閉ざした。



「嘘でしょ……」



靴を脱いで、廊下にしゃがみ込んだ私は気づいてしまった。



歩夢のことを好きになりかけている自分がいることを。



そう、あと何歩か踏み込んだら……


きっと私は歩夢を好きになるに違いない。