王子様の弱みを握っただけなのに。



恐怖と恥ずかしさとたくさんの感情がこもった言葉を、いとも簡単に受け止めてくれた。


その証拠に、私の頭を優しく撫でた。



「沙也加、悪いけど仕事。
渉が通報してくれたから家から証拠集めといて」


「うん……!」



中家くん、近くにいるんだ。


それなら私はやること全うしよう。


私はストーカーの顔を見ないように急いで家に戻って、手紙を片っ端から集める。



私が手紙を持って家から出た時は、歩夢はおっさんに袈裟固め(けさがため)をしていた。


……学校の授業だけでこんなにしっかりとした実践ができるなんて、さすが王子様だ。


ほお、と場違いは承知だがひとり感心している。



「高校生舐めるとこうなるぜ?
沙也加のことなら俺が貰ってやるから安心して警察行きなよ」


「くっ、強すぎる……」


「あ、サイレン聞こえた」



やがて中家くんが警察官を引き連れてやって来て、ストーカー規制法でおっさんが逮捕された。