王子様の弱みを握っただけなのに。



助けてくれるかもしれない歩夢もどうせ助けてくれないと勝手に決めつけて自分から手放した。


あれを思い出すといつも冷静ではいられなくなる。


歩夢に助けを求めてそれで駄目だったら手放せば……告白を断ればよかったんだ。



今更あんなこと言って助けを求めるなんて、生意気にも程がある。


今更後悔だなんて馬鹿にも程がある。



からかうのは好き。


だけどああやって人を傷つけることは胸が痛くなって、罪悪感がいっぱいになるから嫌いだ。



自分が嫌いなことをしてしまった上に、ストーカーが望むような結果になったなんて、まんまとストーカーの意思に従った感じがしてとても悔しい。


これ以上はストーカーの意のままになんてさせない。



ひとりでも……今までやれてきたんだから。


いじめだってひとりで乗り越えてきたじゃない。


だから、大丈夫よ沙也加。



「堂々としなくちゃ」



まずはストーカーの意のままにされないようにしよう。


震える両手を無理やり握りしめて、私は孤高の笑みをした。